ある二冊の本から営業ノウハウを教わる
新規開拓営業はアポなしの「飛び込み営業」でしたので、先方はほぼ相手にしてくれませんでした。
運良く話しを聞いてくれたとしても注文にはつながりません。
ここではじめて、今まで自分が「会社名」と会社が積み上げてきた「信頼と実績」のある恵まれた環境の中で仕事をしていたことに気付いたのです。
過去を振り返っても、すべてがそうでした。
実績と伝統のある強い野球チームへ所属し、将来プロへいく同級生らと試合をしていたこと——
結局は自分ひとりの力ではなかったことを思い知らされたのです。
営業成績をいつまでも出せない自分に苛立ちながら、
はじめてきちんと勉強をしないといけない、と思ったのもこの時でした。
そこで書店のビジネス書棚を眺めていると、ある二冊の本が目に留まりました。
神田昌典氏・著『あなたの会社が90日で儲かる!』、藤田晋氏・著『渋谷ではたらく社長の告白』です。
私の勤める会社も本社は渋谷にありました。「営業」「渋谷」「若い社長」という3つのフレーズが重なり、二冊とも即購入。隅から隅まで熟読しました。
藤田氏の著書からは、自分と同じ世代でこんなにすごい人がいるのか、
という驚きとともに自己の情けなさを痛感しました。
私のそれまでの思考は大学野球のころとまるで変わっていなかったからです。
自分が努力を怠ったばかりに高校ではレギュラーになれず、大学では雲泥の差をつけられながら、
またしても努力せず、4年間を無為にしてしまったこと…。
その過去の悔しさを思い返すと、いま努力しなければ、自分はいつまで経っても何者にもなれない、そう思ったのです。
神田氏の著書からは、クビ寸前だった著者と3ヶ月間、売上げ0円の自分が重なりました。
しかし、神田氏は厳しい環境からもオリジナルの手法で起死回生を図るのです。
この二冊から「営業ノウハウ」という武器を手に入れた気がしました。
それは野球でいうグローブとバット、ボール。
そしてコーチからキャッチボール、バッティングを教わったような思いがしてきたのです。
早速、翌日から書籍通りに実践をはじめました。しかし、思うようにはいきません。
そして、また本を購入。実践・失敗・実践・失敗…を繰り返す日々が何日も続きました。
そしてある日、本の一行が目に留まります。
「魚の群れを探す—。」
そうです。私は自分では実践していたつもりが、一向に魚のいない場所で釣りばかりしていたのです。
そこで衣装を扱うオーディション主催会社に電話を掛けまくりました。
すると「御社で作ってくれるのですか!」と今までとは真逆の反応が返ってきたのです。
これには自分でもびっくりしました。
体育会出身で動きだけしか能のない売上げ0円の営業担当から、
稼ぐ営業マンへと変わった瞬間でした。
この経験で、部署へ少しでも貢献できたことが嬉しかったです。
その後、書籍の通り、90日で新規13件、売上げ400万円を上げることができました。
しかし、衣装制作は1回作るとそれで終わりです。また新規客を開拓し続けなければなりません。
これではいつまでも同じことの繰り返しだな、と感じ転職へ踏み切ったのです。