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2025年の浅草周辺ホテル市場 今後の展開とは
浅草の独自性と変化する観光ニーズ
浅草は“日本らしい伝統”と“現代の快適さ”が融合した、観光客にとって魅力的なエリアです。近年、浅草周辺ではインバウンド観光が急速に進み地域全体が国際色を強めています。
観光産業全体のトレンドとして、観光客のニーズは『モノ』から『コト』へと大きく変化しています。観光名所を訪れて写真を撮るだけではなく、その土地でしか味わえない体験や地域住民との交流が旅行の価値を高めています。
“個性”が光る宿泊体験の提供
観光客はこれまで以上に多様化し、個性のある体験を求めるようになります。この変化に対応するためには、浅草という地域の特性を活かし、「ここでしか味わえない体験」を提供することが大きなトレンドになっていきます。
そこで、大事になってくるのが、“個性”が光る宿泊体験です。
日本ではビジネスホテルから高級ホテル、リーズナブルな宿泊施設まですべてに共通しているのが「清掃品質の高さ」で、どのホテルも「清潔な客室」は標準として維持されており、施設の清潔さを売りにするだけでは“選ばれるホテル”になることが難しいという現状があります。
個性を光らせて選ばれるホテルになるために、清掃品質に加えて以下の点がポイントになります。
1.空間設計
2.選べるアメニティ
3.朝食や大浴場の演出
1.空間設計
空間設計とは、人と人がつながる心地よさを重視した滞在空間を提供するという意味です。
たとえば、安いホテルを外国風のドミトリーやホステルのような雰囲気に変えてみるとよいでしょう。これは多国籍の外国人を狙った取り組みですが、共用スペースを工夫し、宿泊者同士が自然と会話や交流を楽しめる環境を整えます。
ラウンジなどは、あたかも「旅人のシェアハウス」のように、気軽にくつろげて情報交換の場となる場所を目指します。ところどころに地元の工芸品やアートを飾ることで「浅草らしさ」を感じられる空間にしていくと、観光客も浅草の文化に触れることもできるので、口コミなどにもつながりやすくなります。
また、食事スペースや共有キッチンでは、旅先で見つけた食材を持ち寄って料理を楽しんだり、他の宿泊者と一緒に食事をする「交流イベント」も定期開催します。これにより、ただ泊まるだけではなく「新しい出会い」や「旅の思い出」が生まれる滞在体験を提供できるホテルとしてアピールすることができます。
このように、
☑ 「高級感」ではなく「居心地の良さ」を優先
→ゴージャスな装飾ではなく、自然素材を生かした温かみのある空間設計。
☑ 多国籍な交流
→言葉を超えて楽しめるイベントや、地元文化を共有する企画を通して異文化体験をサポート。
☑ シンプルでも贅沢なひと時
→お気に入りの本を片手にコーヒーを飲んだり、旅行者同士でおすすめスポットを語り合う空間を演出。
こういったポイントを押さえておくだけで、体験型を重視したホテルへガラリと変化させることができます。
2.選べるアメニティ
浅草エリアにおけるホテル市場での差別化のカギは「アメニティサービスや客室セッティングの工夫」にあると考えています。なぜなら、日本の細かい「こだわりが詰まったおもてなし」は日本人であっても、外国人であっても高い満足度を得られる取り組みだからです。
そこで、即効性のある取り組みを3つご紹介します。
「選ぶ楽しさを提供」
エレベーター前などに「アメニティコーナー」を設置し、宿泊者が必要なアイテムを自由に選べる方式を採用します。この仕組みにより客室に必要最低限のアメニティのみをセットする「シンプルステイ」を実現しつつ、個々のニーズに対応する柔軟なおもてなしが可能です。
そして、ここに浅草らしい工夫を組み合わせることが、大きなポイントです。たとえば、日本文化を感じられる和風デザインのフェイスマスクや茶葉入りバスソルトを追加するのも効果的です。
こういった感じで、選ぶ楽しさや「ここでしか体験できない日本の気遣い」を演出していきます。
「客室の設えをコンセプトに合わせて最適化」
ホテルのコンセプトに沿った客室セッティングを工夫することで、「宿泊体験そのもの」をアップグレードできます。たとえば、ビジネス向けホテルならデスク周りに充実した文房具セットやコーヒーを配置し、「仕事のしやすさ」を提供しています。一方で、観光重視の宿泊施設なら、窓際にティーテーブルを設置し旅の合間に浅草の街並みを眺めながらほっと一息つける空間を用意することが考えられます。
たとえば、「浅草の下町文化」を感じさせる湯呑み茶器や提灯風のナイトライトを配置したり、旅行ガイドや観光マップを部屋にセットし、「旅行者目線のおもてなし」を演出するのも一つです。
「エコをテーマにしたサービス提供」
環境意識の高い観光客向けに、アメニティの種類を必要最低限にした「エコスタイル」も注目されています。客室に置くアイテムを減らしつつ、必要な場合はフロントや共用スペースで受け取れる仕組みにすることで、無駄をなくし、環境負担を軽減します。
たとえば、再生素材を使用したスリッパや歯ブラシを導入し、サステナブルな姿勢をアピールしたり、布製ランドリーバッグの貸出で「プラスチック削減」をアピールするだけでも、十分に効果的です。
また、アメニティをシンプルにする代わりに共用スペースでは地元で焙煎された浅草限定のコーヒーや日本茶のティーバッグなどを提供します。環境に優しい贅沢感を楽しめる「地域密着型のおもてなし」をしているホテルとして、他のホテルとの差別化につなげることができます。
3.くつろぎを重視した「朝食サービスと大浴場の提供」
観光地のホテルでは、朝食と大浴場が「一日の始まりと終わりを彩る重要なポイント」になります。特に、地元の新鮮な食材を活かした和洋折衷の朝食や広々とした大浴場は、多くの宿泊者にとって「特別な贅沢」を感じてもらうための演出になるからです。
特にホテルの朝食は、そのランキングがテレビで放送されるなど注目を集め、ホテルの人気度に大きく寄与しています。
これらの取り組みでホテルの“個性”を磨き、より魅力的な宿泊体験を提供できる“選ばれるホテル”へ進化していくことが大切です。
日本の魅力を発信する舞台へ
日本を代表する観光地であり多くのホテルが、きれいで当たり前という水準を満たす浅草は、これまで多くの観光客を呼び込んできました。しかし、ホテル市場の魅力はその先にあります。「おもてなしの方法」や「宿泊体験のコンセプト」によって宿泊客の心に残る体験が生まれてホテルのファンになり、リピーターや新しい観光客を呼び込むことが期待できます。
浅草のホテルが「地域文化と観光客を繋ぐ架け橋」として役割を果たすことができれば、宿泊施設はただの宿泊場所ではなく、「日本の魅力を世界に発信する舞台」として進化を遂げることができます。
各ホテルの個性が光る宿泊体験がどのように進化していくのか。2025年も浅草エリアから目が離せません。